脳梗塞と食事~予防・改善に向けた食事療法



脳血管障害の大半が「脳梗塞」


一般に「脳血管障害(疾患)」と呼ばれる脳の病気は、「脳の血管が破れる」か、「脳の血管が詰まる」ことによってもたらされます。


このうち「脳の血管が詰まる」病気の代表が「脳梗塞」で、脳血管障害(疾患)全体のおよそ7割を占めています。

(なお脳梗塞の概要については、関連サイト「脳梗塞の前兆と症状~予防・治療の概要を知る」「脳梗塞のリハビリと後遺症 押さえておきたいポイント」も、あわせてご覧ください。)

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脳梗塞は、脳の一部分の血流が動脈硬化によって妨げられて滞った状態の「脳血栓(のうけっせん)」と、血栓ができて脳の一部分の血流が完全に止まってしまった状態の「脳塞栓(のうそくせん)」とに分けられます。

症状が重かったり対応が遅れた場合には、身体の一部になんらかの後遺症が残ったりするとともに、再発しやすいという特徴を持つ、恐ろしい病気でもあります。


ここでは、脳梗塞の食事について、主なポイントを解説します。


ただしすでに治療を受けている方は、まずは医師と相談のうえ、食事療法を進めてください。食品の栄養素によっては、過剰な摂取が治療にマイナスとなる場合もあるからです。

また脳梗塞の他にも生活習慣病を合併している場合は、「何の病気を併発しているかで食事療法も違ってくる」ことに注意しましょう。

たとえば糖尿病なら特に「炭水化物(糖質)」、高血圧なら「塩分」、腎臓病なら「たんぱく質」の摂取において、食事内容・分量・回数・調理法等で注意すべきポイントも異なってきます。

このようなケースでは担当医師および管理栄養士ときめ細かく相談しながら、食事療法を進めていく必要があります。


動脈硬化~脂肪の摂りすぎ・血中コレステロールの増加

脳梗塞 脳血管障害



動脈硬化が進んだ結果、脳の血管が詰まって脳梗塞が引き起こされるケースも多いので、「動脈硬化を引き起こす要因」を遠ざける必要があります。


具体的には、糖尿病や高血圧等すでに生活習慣病の患者である場合は、まず第一にその治療に努めます。


加齢に肥満・生活習慣の乱れが相まって引き起こされる動脈硬化は、脳梗塞のみならず、高血圧・糖尿病・脂質異常症など様々な「生活習慣病」の大きな要因となっています。

いわゆる「メタボリックシンドローム(メタボ)」対策、すなわち「血圧と体重を適正な範囲にコントロールしつつ、動脈硬化の予防を意識した内容の食事を続ける」ことが、脳梗塞の予防・再発防止の食事療法としても機能します。


現時点で何らかの治療を受けていなくとも、過度の喫煙・飲酒が常態化して生活習慣病の「予備軍」となっている場合は、早々に生活習慣の見直しをはかって動脈硬化のリスクを減らしていくことが大切です。


動脈硬化を引き起こす最大の要因は「加齢による血管の老化」とされますが、動脈硬化自体は血中のコレステロールが増加し、動脈壁にたまることによって引き起こされるものです。


したがって血液中のコレステロール・中性脂肪が多くなると、動脈硬化ひいては脳梗塞のリスクが高まることになります。そのため脂肪の摂り過ぎに注意し、血中のコレステロール値を適した水準に保つようにする必要があります。

食事



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油脂(あぶら)の主成分はいわゆる「中性脂肪」ですが、体内で分解されて「脂肪酸」として取り込まれます。

この脂肪酸には「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」があり、体内での働きはそれぞれ異なります。

簡単な見分け方として、冷蔵庫に入れたときに固まってしまう油脂は、主成分が「飽和脂肪酸」とみてよいでしょう(固まらないのが「不飽和脂肪酸」)。


このなかでLDL(悪玉)コレステロールを酸化させて動脈硬化を起こしやすくするのが「飽和脂肪酸」で、これは肉の脂身やバター等の高脂肪乳製品・お菓子や揚げ物等の加工食品に、多く含まれています。

逆に「不飽和脂肪酸」の一つである「n-3系脂肪酸」には、血中内の中性脂肪やLDLコレステロールを減らし、動脈硬化を防ぐ作用があることが判明しています。

「n-3系脂肪酸」には「DHA(ドコサヘキサエン酸)」「EPA・(エイコサペンタエン酸)」等があり、これらはサバ・イワシ・サンマといった青魚類や大豆食品に多く含まれています。

脳梗塞予防において、日々の食事での基本的な心がけとしては「肉よりも(青)魚・大豆食品」になるわけですね。


ただし「不飽和脂肪酸」であっても、すべて身体によいわけではありません。不飽和脂肪酸の一種である「トランス脂肪酸」はLDLコレステロールの増加と動脈硬化を進めるとして、WHOが過剰摂取に注意するよう勧告を出しています(現状、日本では法的規制までは無く、事業者の自主規制に委ねられています)。

「トランス脂肪酸」はマーガリン・マヨネーズ・ファストフード類に多く使われており、これらの過剰摂取は避ける必要があります。


油脂については「不飽和脂肪酸ならOK」「飽和脂肪酸はNG」といった単純な話ではなく、どちらも「アブラ」であるため、摂り過ぎると肝臓に負担をかけます。脂肪はカロリーが高いので、摂り過ぎは体重増に直結しやすくもなります。

脂肪酸と病気の関係性には未知の面も多く、飽和脂肪酸の摂取を避けすぎると、逆に脳出血が起きやすくなるとの研究もあります。


要するに脂肪の摂取においても、守るべきポイントは「適量をバランス良く」に尽きるわけです。ちなみに厚生労働省は、一日の食事摂取エネルギーにおける脂肪の割合を20~30%程度に収めることを推奨しています。


動脈硬化の促進につながる「活性酸素」の発生を抑える、いわゆる「抗酸化食品」群も、日々の食事のなかでバランスよく摂取したいものです。これらは脳梗塞のみならず、がんや他の生活習慣病の予防にも効果があるとされます。


ビタミンC・Eやカロテノイドなどを多く含むカボチャ・人参・トマト・玉ねぎなどの緑黄色野菜や根野菜、食物繊維も多く含む玄米や大豆製品・海藻類・キノコ類のほか、緑茶やゴマなども優れた抗酸化食品です。


さらにカルシウムが不足すると、骨から溶け出たカルシウムが血管内にたまって動脈硬化の一因になるとされます。

日本人はもともとカルシウムの摂取量が不足気味とされていますが、カルシウムおよびカルシウムの体内吸収を促すCPP(カゼインホスホペプチド)を同時に含む乳製品(牛乳・ヨーグルトなど)も、日頃から意識してとりたい食品群です。


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脳梗塞予防と血圧~塩分排泄を促す食事・栄養成分

脳血管疾患 塩分制限



脳血管疾患全般に大きく関係してくるのは「血圧」であり、「塩分の取りすぎ」は血圧に大きく影響を与えるとともに、脳血管疾患の再発を招きやすくします。


体内のナトリウム増加が血管を収縮させ、血圧をあげる方向に作用するためです。高血圧の患者が、医師の指導のもと食事において厳しい塩分制限を課せられているのはそのためです。


したがって食事においては、すでに医師の診察を受けている場合は指示された塩分摂取量を守るようにし、また今後の予防という点では、一日の適正な塩分摂取量を把握して、調理や食材・調味料の使用においても味付けを薄くするなどの工夫を日頃の食事で心がけるようにします。


ちなみに、高血圧治療における一日の塩分量の目標はわずか6グラムとなっていますが、現代の食生活では誰もが、その倍以上の塩分量を摂っています。

和食は栄養バランスこそ全体的に優れるものの、漬物や醤油・味噌等の調味料の使用により塩分量が多くなりがちで、現代日本人の1日の平均摂取塩分量は約13グラムとなっています。

目標達成にほど遠い状況ですが、それだけ現状の食生活の塩分量を見直す余地が大きい、とも言えます。


外食の多い方なら、主なメニューの大体のカロリー量・塩分量をあらかじめ頭に入れておき(関連書籍やインターネットで検索しましょう)、塩分の高い料理はできるだけ避けてオーダーしたり、あるいは完食せずに多少は残す習慣を身につけるようにします。


また、塩分そのものの摂取量を抑える工夫をすると同時に、塩分が体内に吸収されにくい・塩分が体外に排出されやすい成分を含んだ食べ物も積極的にとるようにしましょう。

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トマト カリウム



塩分の排泄を促す作用があるのは「カリウム」です。

カリウムの摂取量が多いと血圧が低下する「逆比例」の関係にあることは、国内外の多くの研究結果から明らかになっています。これは結果的に、脳梗塞のリスクを下げることにもつながります。

厚生労働省は、生活習慣病予防のためのカリウムの摂取目標量を男性1日3,000mg、女性1日2,600mg(2015年版 日本人の食事摂取基準)としていますが、大半の日本人が500~1,000mg程度の不足となっていて、目標量に大きく届いていません。

現状減塩には十分気をつけている、塩分(ナトリウム)の摂取量はこれ以上減らしにくいといった方は、カリウムが多く含まれる食品の摂取を増やす方向で考えるのもよいでしょう。


カリウムはほぼすべての食べ物に含まれますが、特に海草類・ほうれん草・じゃがいも・バナナ等の果物、また緑茶やトマトジュース等に多く含まれます。


汗をよくかく人や、お菓子類や塩辛いものが好きな人、また血圧が高めの人は、カリウムの多く含まれた食品を積極的にとるようにしたいものです(ただし、すでに病院で高血圧の服薬治療を受けている方はカリウムの過剰摂取による副作用、また腎機能が低下している方はカリウムの排泄にかかる「高カリウム血症」のおそれがあるため、事前に医師との相談が必須です)。


もうひとつは「食物繊維」です。食物繊維は、ナトリウムを吸着して体外に排出すると共に、血中コレステロール値の上昇を抑える作用があります。

コレステロール値が下がることによって脳血管障害のリスクも下がり、脳梗塞の予防・再発防止のみならず、高血圧の症状改善にも貢献します。

食物繊維を多く含む食品には、いんげん豆やあずきなどの豆類、昆布やわかめなどの海草類、あるいはごぼうやさつまいもなどの野菜類があります。

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豆類といえば、「納豆」が思い浮かぶ方も多いでしょう。納豆は、血栓を溶かす作用のある「ナットウキナーゼ」が含まれており、これが脳梗塞の予防によいとされていますので、積極的に摂取したい食品です。


ただし、すでに脳梗塞の治療中で、病院から血液が固まるのを防ぐための抗血液凝固剤(ワーファリンカリウム)を服用されている方は、納豆に含まれる別の成分である「ビタミンK」が薬の作用を妨げてしまうため、逆に食べてはいけないとされます(他にほうれん草・ブロッコリーなどもビタミンKを含むため、同様に食べてはいけません)。


納豆などビタミンKを含む食品は、脳梗塞の予防にはオススメでも、発症後・治療後には避けるべき食品となりますね。

ちなみに現在は「プラザキサ」という、ビタミンKを含む食品を摂取しても問題が生じない抗血栓薬(抗凝固薬)がありますが、ワーファリンを代用できるか否かは医師の判断となります。

水分 脳梗塞予防



体内の水分が不足すると血中濃度があがるため、日常生活では水を意識的に飲む習慣をつけるようにします(ごく普通に生活していても、人は一日に2リットル以上の水分を失っているそうです)。


とりわけ高齢の方は、歳をとるにつれ水をあまり飲まないようになってくるため、どうしても水分不足となりがちです。夜寝る前と朝起きた直後、コップ一杯の水をとる習慣を身につけるようにしましょう。


スポーツの前後(とくに前)、あるいは暑い日中の長時間の外出や入浴の前後にも、こまめに水分を補給する習慣を身につけておきたいものです。


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食事療法に加えて、生活習慣全般の見直しを


最後になりますが、脳梗塞を含めた脳血管疾患の予防・再発防止を考える場合、「血中コレステロール値と血圧の管理」が大切であることをよくおぼえておくと同時に、その改善にプラス効果がある成分を含む食品を、日頃から摂取するよう心がけたいものです。


脳梗塞をすでに発症した患者の場合は、「他の主な生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症・心臓病等)の危険因子すべてをコントロールすることにより、再発の危険性が8割近く下がる」と推計した研究結果もあります。


再発防止のための食事という点では、特に「塩分」「糖質」「コレステロール」の摂取量を許容範囲に抑えた食生活を続けることが、危険因子の抑制に貢献します。


特定の単品をたくさん摂るような極端なやり方を避け、「1日3食・一回ごとの食事で、たんぱく質・脂質・糖質にビタミン・ミネラル・食物繊維を加えた栄養の、全体的バランスをとる」ことを重視します。


現在の体重と日々の活動量から割り出した「1日の適正なエネルギー量」に照らして、必要な栄養を一日3食の食事メニューに、適切に配分します。その上で担当医や管理栄養士とも相談し、個々の病状や生活環境に応じた調整を加えます。

あわせて当人の生活の質を保つためにも、「楽しんで、長く続けられる食事」がどうあるべきかは、常に意識しておきましょう。


加えて、生活習慣病としての脳梗塞という観点から、内臓脂肪が過剰となる肥満を避けるため日頃から適度な運動を続けることや、喫煙やアルコールの摂り過ぎ等の危険因子を極力排除すること、さらには血圧の急上昇を避けるべくストレスの少ない過労を避けた生活をおくることの大切さも、心に留めておくようにしましょう。


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